RESEARCH
これまでの研究: 離散選択モデルにおける内生性バイアスの補正手法の開発
学部から修士にかけて,主に熊本地震後の益城町における被災者の住まい意向に着目した研究を行っていました.災害からの円滑な復興を進めていくためには,被災者の住まい意向を把握し,それに応じた施策が必要となります.益城町が実施した住まいの再建に関する意向調査データを多変量解析手法に基づき分析することで,被災者の生活再建プロセスに関する理解を進めてきました.その延長線上として,博士課程在学中では動的な住まい意向の変遷や生活再建プロセスを記述するための新しいモデリングに着手しました.課題として,異なる時点間の住まい意向や生活再建プロセスの選択に生じる内生性 (ここでは未観測の心理的誘因等によりモデルの推定結果にバイアスが生じることを指す) を適切に対処する必要がありました.この課題を解決しなければ,災害公営住宅の家賃や立地,その他の政策変数 (政策上変更可能なもの) が人々の生活再建に与える影響を過大 (過少) に評価してしまう恐れがあります.災害が希少事象である以上,そのようなバイアスを補正し,限られたデータから知り得ることを適切に推測する必要があります.そこで博士論文では,内生性に対処し得る新たな離散選択モデルの提案を行い,またシミュレーションや交通調査データを用いた分析により提案モデルの有効性を検証しました.提案モデルの災害調査データへの適用も今後進めていく予定です.
これからの研究: 都市圏レベルの都市・交通政策分析のためのノンパラメトリック型の居住地選択・交通行動モデルの開発と実装
効率的な都市の形成・交通インフラの整備に関係する議論は海外でも盛んに行われていますが,とりわけ我が国では頻発する自然災害,人口減少・高齢化社会の進行による都市の縮退,東京都市圏への人口流入,社会インフラの維持コストの増大…等の問題により,人々の居住地と活動圏域,交通行動の変容を長期的に促していく政策の必要性は高まっています.そのためには,都市圏レベルの比較的大規模な政策シミュレーションを通して施策の検討を重ねていく必要があります.現在の研究では,この政策シミュレーションを行うための基礎理論の構築に取り組んでいます.具体的には,以下の5点を兼ね備えているシミュレーションモデルの開発を目指しています.
- 様々な政策シミュレーションを行える柔軟性
- ノンパラメトリック学習による高い予測精度と再現性
- 大規模なサンプルサイズに耐えうる高い推定効率性・オンライン推定への対応
- シミュレーション結果の解釈・説明可能性
- 実務の現場への負担が少ない実装・運用パイプライン
データに対する要求が高い,すなわち様々な背景要因の十分な観測を暗に前提とした上で開発されるtheory-drivenなモデルではなく,そのような要因の観測を必ずしも必要としない効率的なモデリングを志向しています.